2021年7月7日水曜日

【後編】新緑と滝の織り成す渓谷美「大杉谷渓谷・大台ケ原」【三重県 奈良県】

 「前編」からの続きになります。
今回は桃の木小屋から先の大杉谷渓谷の核心部と大台ケ原登頂までを紹介します。

朝6時頃に桃の木小屋出発。
大台ケ原山頂バス停まで最短で向かうなら朝食を食べてからでも十分バスに間に合いますが、大台ケ原のハイキングコースもしっかり歩きたかったので、朝食をお弁当にしてもらい早めの出発としました。

天気は青空が見えるものの雲が多め。
小屋では携帯電波は入らないので天気予報も確認できず、さてこれからどうなるか?
期待半分不安半分でいざ出発!!

小屋からしばらく進むと日本の滝100選にも選ばれている「七ツ釜滝」が見えてきます。
その名の通り、大きな釜が何段にも続き流れ落ちる豪快な滝。
遠目でしたが、その迫力は十二分に伝わりますね。


桃の木小屋以降の渓谷はまさに核心部!
路も細くなり岩壁のトラバースや滝の高巻きの繰り返し。鎖もありますが滑り易い場所が多くなかなか気が抜けません。
ちょっとしたつまずきでも大怪我になるので要注意!

とは言え、渓流の水が本当に綺麗。
当日はそれなりに暑い日だったので飛び込みたい衝動に何度駆られた事か(笑)


神経をすり減らしながら更に進むと、大杉谷渓谷の新たなスポットとなった崩落地に着きます。
この崩落地は2004年9月の台風によって引き起こされた山体崩壊によって生まれ、その後大杉谷を10年間に亘り通行止めにしていました。
現在では安全確認がとれ通行可能となっていますが、積み重なった家の大きさ程もある多くの巨石の間を縫って進む路では自然の巨大な力を目の当たりにすることができます。
10年以上前とは言え、地球の歴史にして見れば一瞬前の出来事なので山体崩壊の現場がこれだけ生々しく見れるのは貴重な場所かと思います。

崩落地を過ぎた後に振り返って撮った写真です。
崩落の形がなんとも生々しい。
しかし、もう少し規模が大きい崩落だったら沢を塞いでしまい大杉谷渓谷は無くなっていた可能性もあるって事ですよね…

そして、大杉谷渓谷コースの最後のスポット「堂倉滝」に到着。
迫力は今までの名瀑達よりも劣りますが、その均整の取れた形とエメラルドグリーンに染まった大きな滝壺はまるで絵画のよう。

さて、メインの縦走コースではこの堂倉滝で渓谷ルートとはお別れ。
大台ケ原最高峰の日出ヶ岳に向かって本格的な登りの尾根ルートになります。
少し残念ですが大台ケ原も初めてでメインの一つなのでレッツクライム!

尾根をしばらく登ると林道と合流します。
ちなみにこの林道は渓谷コースが増水等で通行できない場合のエスケープルートになっており桃の木山の家の近くまで繋がっています。

そして、このすぐ近くには粟谷小屋があります。
補給も必要無かったので今回はスルーしましたが、自分とは逆の大台ケ原→大杉谷渓谷のコースをとるなら桃の木小屋より便利そうなのと、あとは沢登りや渓流釣りのお客さんが多いみたいですね。


粟谷小屋から更に標高を上げシャクナゲ平までやってきました。
その名の通りシャクナゲが群生している場所ですが、まだつぼみのものも多くピークには少し早かったようです。

いよいよ日出ヶ岳までの最後の登り!
あたりはすっかりガスの中!(悲)
粟谷小屋くらいまでは青空が見えてましたが…無念なり。

そして、大台ケ原最高峰の日出ヶ岳に到着!ありがとう御座いました!
まっちろ&強風&激寒の残念山頂ですが、お客さんはそこそこ。
さすが百名山ですね(笑)

生憎の天気なので、さっさと山頂バス停まで行ってレストハウスあたりで一杯やりたい気分になりましたが、このまま直行するとバスまで3時間以上待ちそうだったので、淡い期待を胸に予定通り大台ケ原ハイキングコースを歩いてみる事にしました。

山頂部の笹原と木道。
山頂ではガスだけでしたが、雨まで降ってきました。
晴れていればきっと太平洋や大峰山脈が見渡せる好展望の路なんでしょうね~(白目)

先に進むと何故か神武天皇像が。
こういうのがあると山ってよりは観光地っぽさがマシマシですよね。
神武天皇と大台ヶ原にどんな関係が?って調べようとしましたが、なんかめんどくさくなってやめました(笑)

大台ケ原名物の大蛇グラまできました。
ハイハイ、虚無虚無。
岩も滑りやすく先端まで行く理由も無いので途中で止めておきました。

まだ時間もあるのでどこかで晴れ待ちしようとも考えましたが雨風が強まる一方なのでゴールの山頂ビジターセンターに向かうことに。


人の少ないハイキングコースをのんびりふらふら。
晴れてればきっと気持ち良い笹原広がる路や、山頂部でありながら水が豊富な苔むした森。
思ったより色々な姿を見せてくれました。

そして、ゴールの大台ヶ原山頂ビジターセンターに到着!
お疲れ様でした。
あまりの視界の悪さにバス停の位置がわからず係員の人に聞いてしまいました。

この後はバスの時刻まで山頂レストハウスで乾杯!
下山即ビール!車を運転しないで良いって素晴らしい!(笑)

無事バスに乗り込み、帰りは近畿鉄道吉野線の大和上市駅へ。
そこから電車とバスで大阪空港まで行き、飛行機で関東へ戻りました。
当初は一泊して大阪観光する予定でしたが、最初に書いたようにちょうど関西都市部でコロナが急拡大してた時だったので、それは断念…
関西方面にくる機会はなかなか無いので残念でした。

さて、今年のメインイベントの一つとして考えていた大杉谷渓谷~大台ケ原、無事歩くことができて良かったです。
日本一の降雨量を誇る大台山地が作り上げた新緑の渓谷美は本当に素晴らしく、雷鳴の如く岩壁を流れ落ちる名瀑群は圧倒的でした。
大杉谷渓谷はまだまだ知名度が低いですが、みなさんに歩いて欲しい名コースと自信を持ってオススメできるので、大台ケ原を計画する人は是非検討してみて下さい!
ただ、毎年滑落事故が起きてるように、それなりに危ない路なのも事実なので、無理せず余裕をもった計画が必要とも感じました。

紅葉シーズンも素晴らしいと聞いたので、チャンスがあればまた行きたいですね!

以上です。

2021年7月4日日曜日

【前編】新緑と滝の織り成す渓谷美「大杉谷渓谷・大台ケ原」【三重県 奈良県】

 2021年も半分過ぎての7月突入。
年始に今年やりたい事や行きたい場所を考えていましたが、ふと思い出してみるとそのほとんどが未達成で、ちょっと凹んでいる今日この頃みなさま如何お過ごしでしょうか?

コロナ禍とは言え行動制限が掛けられる訳では無いので、結局自分のやる気の問題なのかな、って気がしています。
まあ、今現状の悶々とした世の中の雰囲気に吞まれているとも言えますが、それはそれで悔しいものがありますね。

とは言え出来た事もあり、今回紹介する「大杉谷渓谷~大台ケ原」は今年歩きたかったコースの一つです。
この計画は去年の5月実行する予定でしたが、その時期は最初の緊急事態宣言と被ってしまい交通機関や山小屋はもちろん休業で泣く泣く断念。
今年もあまり良い状況とは言えませんが、計画を制限するような事象は無かったので予定通り決行してきました。

「大台ケ原」は日本百名山の一つでご存知の方は多いと思います。
また、ほぼ山頂まで車で行ける事もありピークハントだけなら容易な山ですが、自分の中で気になっていたのが大台ケ原を源流とする「大杉谷渓谷」。
知名度はまだ低いですが、日本三大渓谷の一つに数えられ「西の下ノ廊下」とも例えられる程の切り立った渓谷という事で俄然興味が沸き、大台ケ原に登るならこの大杉谷渓谷を歩いて登ろうと決めていました。

さて、どんな絶景を見せてくれたのか?2日間に亘る山旅、紹介していきたいと思います!
長文になるので前後編に分けますがお付き合い頂ければ幸いです。

2021/5/14~15
コース
1日目:三瀬谷駅→(バス)→大杉谷登山口→桃の木山の家
2日目:→堂倉滝→日出ヶ岳→大蛇グラ→大台ケ原ビジターセンター→(バス)→大和上市駅
累積標高(上り): 2084m
累積標高(下り): 793m

今回の山旅の起点は名古屋駅。
ここから熊野・伊勢に向かう特急「南紀(1号)」で大杉谷渓谷への登山バスの発着地である「三瀬谷駅」へ。
大杉谷へアクセスできる公共交通機関はこれだけなので、大台ケ原へ抜ける縦走を考えてる人はほぼこの方法を使う事になると思います。
登山バスもこの電車に合わせて運行されています。

三瀬谷駅です。
周りは小さな街ですが、登山客以外の乗り降りする人はいない静かな駅。
青い空と輪郭のしっかりした雲と合わせて良い感じ。こういう雰囲気大好物。

自分も含め降りる人は8人くらいいましたが全員大杉谷渓谷目的でしたね。

平常は登山バスが出発するのはこの駅のすぐ近くの道の駅「奥伊勢おおだい」からですが、この日は人身事故の影響でこの電車の到着が1時間程度遅れた事もあり、駅でバスが待っててくれました。

バス利用者は15人程度。バスを予約した時点では臨時便が予定される程の埋まり具合でしたが、だいぶ減ったようです。
ちょうどコロナ感染者が関西都市部を中心に拡大してたのでその影響ですかね…

ぶっちゃけ自分としては自粛をしてもその我慢に見合う対策を何もしない行政に嫌気がしてたので、今シーズンは受入側が開いているなら行動を自粛するつもりはありませんでした。
もちろん、個人として感染対策はしての話ですけどね。

では、大杉谷渓谷に向かって出発!

途中、トイレ休憩を兼ねて「大杉谷登山センター」に停車。
ここでは、任意ですが環境保全を兼ねた入山料¥1000を納めます。
お礼として良い感じの大杉谷グッズが貰えるので是非どうぞ~

三瀬谷駅から約1時間半で登山口バス停到着。
一応マイカー登山者用に数台の駐車スペースがありますが、大台ケ原への縦走目的では回収しに戻ってくるのにほぼ一日必要なので、渓谷を日帰りする以外の活用方法は無さそうな気がします。

バス停から10分くらい舗装道路を歩き発電所施設を過ぎると本当の登山口。
では、よろしくお願いします(ペコリ

よし、行くぞ!と気合を入れて進むといきなりクライマックス(笑)
黒部峡谷の水平歩道を連想させるような絶壁に沿って水平に穿たれた路が延びてます。
高度感は黒部ほどでは無いですが、かなりの緊張感!
常に水がしたたり落ちて路も滑り易いので、しっかり鎖を持って進みます。

下を望めば綺麗なエメラルドグリーンの川。
まだまだ川幅は広く渓谷感は無いですが、足を滑らしたら大怪我が済まないでしょうね。気をつけて行きましょう!

と、こんな感じに危ない路もありますが、だいたいは安全な渓谷沿いの路。


苔むした森やキラキラした水しぶきをあげるちょっとした滝もあり、変化に富んだコースが楽しめます。

しばらく進むと今までの小さい滝とは明らかにスケールが違う大きな水の音が。

ふと山の上を見上げると、ちょうど山の稜線から流れ落ちる豪快な滝が見えてきます。
これが最初の景勝スポット「千尋滝」。
山と空の境界から水が落ちる姿はまるで天空の滝。
あんな高い場所から大量の水が落ちてくるのはちょっとした驚き。

滝の近くには展望スポットも兼ねた東屋があるのでちょうどいい休憩スポットにもなってます。

では、先に進みましょう!

徐々に川幅も狭くなり渓谷感も増すと同時に危ない路も増えてきます。
ビジターセンターの人が先日も命に別状は無かったものの転落事故があったと言っていたのを思い出し気合を入れ直します。

更に進むと川の緩やかな場所に出ます。
ここが景勝スポット「シシ淵」。

絶壁の奥に見える滝と新緑がまるで1枚の絵画。
さすが景勝スポットになるだけのことはありますね。幻想的です。

先に書いたように電車遅延のせいで出発も1時間以上遅れましたが、それ以上にCTを巻けているのでここでしばし休憩。

まあ、のんびりきましょう~~
沢の音と風が揺らす木々の音が最高の春日和でした。

では、再出発!

少し進むと先の「シシ渕」の奥に見えていた滝である「ニコニコ滝」の近くを通ります。
前日の降雨のおかげか水量も多く圧倒されました。
…それにしてもどうして「ニコニコ」?

川の支流となる沢を超える場所にはしっかりとした吊橋が掛けられており、渓谷美を感じる展望も楽しめます。
垂直に切り立った岩壁と新緑が織り成す渓谷美は本当に素晴らしい。

そして、本日の宿泊先である「桃の木山の家」に到着。
大杉谷渓谷→大台ケ原の縦走だとCT的にほぼこの小屋に宿泊する事になると思います。

ボリュームのある温かいご飯に、お風呂まであって至れり尽くせり。
人気の山小屋なのも納得ですね!

明日はいよいよ大杉谷の核心部&大台ケ原登頂へ!
ではおやすみなさい!

(後編へつづく)