2022年4月24日日曜日

岩の城「大崩山」【宮崎県】

 自分で山を登ってみようと思い計画を立てる人は、最初は情報量の多さから深田百名山を選ぶ人が多いように感じます。
でも、ある程度登る回数が増えてくると選ぶ基準は多様性を持ち、そのまま百名山を目指す人、珍しい花や動物と会える山を選ぶ人、賑やかな山を選ぶ人、マイナーで静かな山を選ぶ人、などなど…

じゃあ、自分にとって山を選ぶ基準は?と聞かれると、最近は「自分の目で見てみたい景色がある山」と答えます。

さすがに10年近く多くの山に登っていると絶景慣れしてしまったせいか、その「見てみたい景色」に求めるレベルも上がっており、本気で「見てみたい!」と思える場所もなかなか見つからない状態になっていましたが、約2年前、久々にビビッ!とくる写真を見つけました。

それが「大崩山」です。

「大崩山」は日本二百名山の一座で九州の宮崎県延岡市に在り、大崩山群の主峰。
現在ではネットのおかげで知名度も上がりハイカーも増えてきていますが、少し前まではほとんど人が入る事が無く九州最後の秘境とも言われていたそうです。

自分ももちろん事前に色々と調べましたが、とにかく危ない噂ばっかりだったので、行くのを躊躇してた時もありましたが、やはり「見てみたい!」という欲望が勝り気合を入れて2021年秋のメイン山行としてチャレンジしてきたので、今回のその様子をレポしたいと思います。

「大崩山」(1643m)
*柚ダキから小積ダキの大岩壁を望む

2021/11/21
コース:祝子川登山口→大崩山荘→(和久塚尾根)→山頂→(坊主尾根)→大崩山荘→登山口

「大崩山」に登るコースは大きく二つ。
東側の祝子川源流域から登る湧塚コースと、西側の宇土内コースです。

湧塚コースは危険箇所が多いですが「大崩山」の最大の魅力である岩峰群を見れるコースで、宇土内コースは基本樹林の傾斜の緩やかな安全な尾根路で最短で山頂に至るコースです。
これだけ書くと宇土内コースが良いように思えますが、自分としては湧塚コースの岩峰群を見れないなら「大崩山」に登る意味は無いと考えていたので、湧塚コース一択で計画を立てていました。

(*スタート未明だったので写真は下山時です。)
そんな訳で祝子川登山口に到着。
朝6時半と早朝でしたが、連休中日という事で先着は5台程度。
整備されている駐車場は無いので、路肩の空きスペースに止めます。
登山口から離れて良いなら駐車スペースはそこそこある感じですね。

登山口。今日はお手柔らかにお願いします。(ペコリ
天気は薄曇りながら雨の心配は無さそうで一安心。
登ったからこそ言えますが、雨の日は絶対登ったらダメな山ですね。

まずは祝子川に沿って進みます。
ところどころ渓流釣り用なのか川に降りる薄い踏み跡があるのが注意ですが、路ははっきりしてるので問題無いと思います。


しばらく進むと無人小屋の大崩山荘に到着。
覗いて見ると非常に綺麗で宿泊場所としては十分そうですね。

ここ大崩山荘を起点に湧塚コースは袖ダキ経由(和久塚尾根)と小積ダキ経由(坊主尾根)で周回コースにできます。
自分は登りは和久塚尾根にするので、そのまま北上。


湧塚分岐までやってきました。
川向かいには岩峰が姿を現わし、これからがいよいよ本番って雰囲気。
正面の急峻な岩峰は「乳房岩」ですね。

祝子川を渡渉。
渡渉自体は問題ありませんが、なんとなく行けそうなコースでいくと対岸に岩の間の広い隙間をジャンプで超える場所があり、もし落ちてしまうと一人の場合這い上がれず詰む感じがして、ちょっと躊躇してしまいます。
普通ならハシゴが掛かってるレベルですよこれは…(冷汗)

とは言え、これ以外に進める路は無さそうなので、助走を付けてジャンプ!
どうにか渡り切って一安心。

さっそく大崩山の洗礼を受けた気分になりました…

渡渉後はしばらくは樹林帯の登り。
落ち葉のせいで踏み後はわかり難くマーキングも少ないので、時々登山道をロストしてしまいます。
登山経験もそこそこあるおかげで、すぐに違和感に気付いて大事になることはありませんが、なかなか緊張を緩める事ができません。
(*上の写真も立派な登山道です(笑))

とは言え、渓流が綺麗ですね~
人も少なく山に溶け込んでる感じがなんとも心地良いです。


岩峰の袖ダキ直下に近づくと、なかなかの急登。
倒木にハシゴ、もうなんでもこいやコノヤロー!(笑)

…そして、投げやりになりながら這い上がった先には…

うおおおおーーー!これだよ!これ!この景色が見たかった!

小積ダキと言われる大岩峰(左)に湧塚の急峻な岩壁の連なり(右)。
まるで不落の岩の城。今まで感じたことがない圧倒的迫力!
まだ日本にこんな場所があったなんて、久々の感動体験でした。


下湧塚までは稜線とトラバース路を行ったり来たりしながら進みます。
相変わらず路はわかり難いので、踏み跡を頼りにするよりはテープの見落としに気を付けて自分で歩きやすい路を歩くくらいのスタンスが良いと思います。

正面の岩峰ピークが中湧塚。
足を踏み外せば奈落の底ですが、もうドーパミンどばどばであまり気になりません(笑)

後を振り返れば小積ダキの大岩峰と祝子川の源流域の風景。
九州最後の秘境と謳われるのも納得の山深さですね。

中湧塚に到着。
もう完全に断崖絶壁。路もありそうで無い感じ。
これ以上稜線を進むのは危険と判断してトラバース路に戻りました。

と言ってもトラバース路もそこそこの傾斜なので、転げ落ちたらタダじゃ済まないんですけどね…汗

上湧塚直下まで来ました。
下山後に知りましたが、この上湧塚も登れるようですね。
緊張続きでここに来るまでで心が疲れてしまっていたんで、完全素通りしてしまいました。

上湧塚を過ぎてしまえば、今までのハラハラドキドキはどこへやら、広く緩やかな尾根道が続きます。なんか、同じ大崩山とは思えないですね。

山頂稜線でモチダ谷コースと合流します。
モチダ谷は沢メインのコースですが、近年の豪雨等で路が崩壊しており、現在は通行禁止になってるようです。
以前は紅葉の名所となっていたようなので、ちょっと残念。


分岐から山頂までの間にある展望地の「石塚」からは薄っすらとですが五葉岳、祖母山・傾山といった祖母山系の山脈が楽しめました。

山頂よりもここの方が展望は良いので、休憩もここがオススメ。

程なくして山頂到着。
ありがとう御座います!
これだけの登った感は久々だった気がします。

さて下山。少しだけ来た道を戻り小積ダキを経由する坊主尾根の方に進みます。

小積ダキまでは比較的広い尾根を下りますが、相変わらず路はわかり難いので注意しましょう。

東側には登りで通ってきた湧塚の岩壁が望めます。
よく見れば岩の上にちらほらと人の姿。
いや、ホント気を付けて下さい…

小積ダキの先っちょまで来ました。
登りで見たあの大岩峰の上に立ってると思うと感慨深いですね。



小積ダキを過ぎると祝子川に向かって一気に標高を下げます。
ひたすらまでに梯子、ロープ、急斜面のトラバースと和久塚尾根に負けず劣らずのえげつなさ。もうゴメンナサイって感じ(苦笑)

樹林帯に戻る直前に小積ダキを振り返ります。
これだけ立派な岩峰にも係わらず、ある程度山の奥に入らないと見れないっていうのもなんか良いですよね。

どうにか祝子川まで降りてこられました。
対岸はもう大崩山荘なので最後の渡渉。

この時は水量も少なく問題ありませんでしたが、岩も滑りやすく、苦手な人は靴を脱いで裸足で渡ちゃった方が良いかと思います。

大崩山荘を過ぎて木漏れ日の中登山口まで戻ります。
帰り道は生きて帰って来れた感でちょっとした放心状態。

とりあえず登山口まで下山完了。
お疲れ様でしたああああ!

いやはや、これだけハラハラした山旅は久々でした。

さて、今回の大崩山、登るのにクライミングや沢登りと言った特別な技術は必要無いですが「山慣れ」してないと危ないです。
行って良い路悪い路、どう行けば安全に進めるか…などなど、その場その場の判断が必要なシーンが結構あります。自分がどれだけ歩けるかをわかってないと判断ミスする怖さはありますね。
あと、実際登ってみるとわかりますが一人で登るリスクは非常に大きいので、できれば山慣れした複数人で行くことをオススメします。

まあ、とにかく色々と反省点もありましたが、あの大岩峰の織り成す迫力の風景をこの目で見れて良かったです。
普段なら「また機会があれば登りたいですね!」で締めるのですが、今回は「もうソロで登ることは無いですね!」で締めさせて頂きます(笑)

以上です。長文になりましたが、読んで頂きありがとう御座いました。