2020年11月16日月曜日

朝に輝く木曽の峰 「空木岳・南駒ケ岳(中央アルプス)」【長野県】

みなさんも御存知でしょうが日本には3つの代表的アルプスがあります。
氷河の作り上げた荒々しい岩稜の織り成す北アルプス(飛騨山脈)、深い森と豊富な植生と一つ一つの山の存在感が大きい南アルプス(赤石山脈)、そしてその両方の特徴を備える中央アルプス(木曽山脈)です。

その中で今回紹介する中央アルプスは北や南と比べ規模は小さいですが、最高峰の木曽駒ケ岳はロープウェイによってアクセスが容易であり、迫力の氷河地形の千畳敷カールや、大展望の稜線とアルプスの魅力を登山初心者でも楽しめる人気の山となっています。
初アルプスは木曽駒ケ岳で、ここでアルプスの魅力にハマったという人も多いと思います。
かくいう自分も初のアルプステン泊は木曽駒ケ岳でした。

ところが木曽駒ケ岳以外に目を向けると、意外にもあまり話題に上がらないのも、この中央アルプスの不思議なところ。
主稜線上にもう一つの日本百名山である空木岳がありますが、ここも池山尾根を使っての日帰り体力勝負が主な登頂方法になっており、主稜線の話をあまり聞きません。

はてはて?どうしてか?
天邪鬼な自分としては逆に興味が湧き、空木岳に登るならこの主稜線を歩いて行くと決めてチャンスを伺っていましたが、コース上で泊まれる場所は駒峰ヒュッテか木曽殿山荘となり連休となればいずれも混雑必須だったので人混み苦手な自分としては敬遠してました。
しかし、2020年コロナ禍の影響で受入人数を制限していた木曽殿山荘の予約が取れた事でギューギュー詰めの心配が無くなったので、今夏決行!

では中央アルプス主稜線縦走レポいってみましょう!

「空木岳」(2864m)
*山頂直下から望む

「南駒ケ岳」(2841m)
*赤椰岳から望む

コース
8/28 官の台バスセンター→(バス・ロープウェイ)→千畳敷→極楽平→檜尾岳→熊沢岳→木曽殿山荘(泊)
8/29 →空木岳⇔南駒ケ岳→(池山尾根)→駒ケ岳スキー場駐車場
累積標高(上り): 1532m
累積標高(下り): 3230m

<1日目>

当日は下山口の駒ヶ根高原スキー場の駐車場に車をデポして徒歩で官の台バスセンターに。
券売所オープン直前には300m近い行列。
あ、あれ?今日は平日(金曜日)じゃなかったっけ…?
久々に来ましたが木曽駒人気は健在。

今回道程は、初日に池山尾根を登り空木岳に登頂して2日目に主稜線を歩いて千畳敷に戻るコースか、その逆かと直前まで悩んでいましたが、初日はガス多めで確実に晴れ間が望めそうなのは2日目午前中だけのようなので、晴天時に空木岳登頂を優先して千畳敷スタートとしました。

どうにか始発のバスに乗り、ロープウェイで千畳敷へ!
下界からあっと言う間に標高2500mの別世界へ。
今となっては見慣れた世界ですが、山を始めた頃は本当にワクワクしたものです。

千畳敷カールで準備をしていると稜線はあれよあれよと雲の中。
もうちょっと粘って欲しかったですが、まあ天気予報通りなのでしょうがない。
時折晴れてくれる事を祈りつつクライムオン!


千畳敷駅を眼下にカールを登ります。
途中には綿毛となったチングルマの群落もあり、きっと初夏は素晴らしいお花畑が広がると思います。

あっと言う間に稜線上の極楽平に到着。
それにしても人がいない。こちら側に登ってくる人は自分以外に一人だけ。
バスセンターの大行列はいったどこへやら(笑)

そして、これから進む稜線はガスの中…
視界を遮るものは無く、晴れていれば素晴らしい景色が広がっていると考えるとやっぱり残念。
でも、風も弱く人の気配も無く、聞こえるのは鳥の声だけと、個人的には悪くない山の雰囲気なので気を取り直していざ出発!


稜線を進み少し標高を下げると雲の下に出たのか稜線や下界の街並みが見えるようになりまた。
晴れてれば楽しく歩けそうな道なのに人気がイマイチなのが信じられません。

檜尾岳を正面に捉えます。
登り返しもそこそこあり立派なピークですが、稜線歩きスタートの極楽平よりは標高は低いんですね(笑)


檜尾岳到着!
再び雲の中ですが、駒ヶ根市側に目を向けると檜尾避難小屋が見えました。
この避難小屋は木曽駒と空木のちょうど中間地点にあり、両方をまとめて縦走するなら良い立地なのでシーズン中はなかなか混み合うそうです。
これだけ景色も良い場所にあるので人気があるのも納得。

さて、この檜尾岳が千畳敷~木曽殿山荘までのおよそ中間地点で、ここまでは展望の広がる歩き易い尾根路でした。
「こんな気持ち良い路なのにどうして北や南に比べて人気が出ないのか?」そんな疑問が湧いてきますが、実はここから先がこの縦走路の真骨頂(悪い意味で)でした…


檜尾岳を過ぎると歩き難いハイマツ帯や、大きな岩を乗り越えたりするような地図からは見えないアップダウンの連続でなかなか思うように進めません。
おまけに天候も悪化し、雨にも降られる始末。

こうなったらアルプスのアイドル雷鳥さんでも出てきてくれれば嬉しいのですが、そんな出会いも無くテンションはダダ下がり。

うん、北や南に比べ人気がイマイチなのがよくわかりました(笑)

そして、そのまま雨に降られ続けるも無事木曽殿山荘に到着。
初日終了、お疲れ様でした。

小屋近くの水場「木曽義仲の力水」は今シーズンは8月中旬には枯れてしまったようなので晩夏に計画する場合はご注意下さい。小屋でペットボトルのミネラルウォーターは購入可能です。

日没直前にようやく少し雲も抜け、夜は満天の星空。
暑くも無く寒くも無くちょう度良い気温だったので、しばし寝転がって星空を堪能できました。
コロナ禍以降、久しぶりに山で過ごす夜だったので嬉しかったですね!

<2日目>

おはよう御座います!
密にならない快適な山小屋のおかげで睡眠もバッチリ!

山小屋としては人数が少なくなる=売り上げが減るという事なので、大変だとは思いますが利用側としては正直悪くない感じ。
個人的にはコロナ禍が過ぎてもこの快適さはありがたいので、客単価を上げてもこの状態を維持して欲しいなんて思ってしまいました。

この時期は山荘から御来光は山に隠れて拝めないとの事なので、できるだけ展望が良い場所まで行こうと思い未明に出発。

しかし、山荘前は天気予報に反して薄いガスが掛かる微妙な状態。
標高を上げればガスが抜けてくれる事を信じて歩みを進めます。


そして、地平線がオレンジに染まり始めると同時にガスも薄くなり、正面に空木岳が姿を表します。
昨日は見れなかった空木岳…、木曽駒と違い鋭い岩峰で成り、薄い雲を纏う姿は圧倒的存在感…!

おおおおおーー!空木岳カッコイイ!!
こんなカッコイイ山だなんて聞いてません!

そして、標高2782地点で御来光。


滝雲が流れる中央アルプスの主凌線や、朝焼けに染まる空木岳は言葉にならない美しさ。
この瞬間の感動はやっぱり何度味わっても最高ーー!


久々の山での朝を堪能した後は空木岳へ最後の登り。
岩峰の間を縫いながらのハードな道のりですが、これだけの絶景に囲まれながらだと疲れも感じません。

そして、空木岳山頂!
ありがとう御座いました!!


山頂からは木曽駒方面の中央アルプスの峰々や南アルプス(の奥にちょこっと富士山も!)の大展望!
本日一番のりだったようで最高の青空の下、最高の山頂を独占できました。

この後は普通は池山尾根で下山なのでしょうが、まだまだ早朝でこんな良い天気なのに下るなんて勿体無い!って事で南駒ケ岳まで行ってみる事に。

空木岳からの見て最奥のピークが南駒ケ岳。
堂々としたお姿はさすが二百名山の貫禄。
では、いざ参る!

南駒まではなだらかな凌線に見えたものの、中間ピークの赤椰岳の前後はなかなかの急勾配で、累積標高は±300m弱程度はありそう。
とは言え、最高の天気と展望のおかげでとても気持ちよく歩けました。

そして、南駒ケ岳山頂!
ありがとう御座いました!

山頂からは越百山や安平路山、恵那山と言った中央アルプス南部の展望が広がります。
南駒ケ岳以南は標高の低い山なので空が広く気持ちいい景色が広がっています。
ああ~、先に行ってみたい!!

オマケとして考えていた南駒ケ岳ですが想像以上に展望が最高で、本当に来て良かったと思えました。

静かで気持ちいい風が吹く山頂をしばし堪能。
では、空木岳に戻りましょう。


さて、空木岳に戻ってきましたー!
早朝とは異なり日帰り客も増え賑やかなに山頂になってました。

そして、まだ10時前ですが、山頂を含め凌線はガスが掛かりつつあります。
ここ近年の夏山は展望が期待できるのは朝方だけになってきたような気がします…
これも温暖化の影響なんでしょうかね。

では池山尾根を下って駒ヶ根高原へ下山しましょう。

下山中、後を振り返るとガスに隠れつつ空木岳。
主稜線上からは切り立った岩峰で成るカッコイイ空木岳でしたが、こちらから見るとなだらかで優しい印象がありますね。
見る方向によってだいぶ印象が変わるもんです。
今日はありがとう御座ました。

池山尾根途中の駒石。
石でありながら、なにか生物的ななにか不思議なものを感じました。

駒石を過ぎるとほどなく樹林帯の中へ。
標高が下がるにつれ、湿り気たっぷりの夏の空気に戻るのを寂しく思いながら帰路を進みます。

途中の大地獄、小地獄はなかなかの難路。
池山尾根ピストン日帰りの場合、下山時は疲れが溜まっているので特に注意が必要かと思いました。

そして、黙々を歩いて車をデポした駒ヶ根高原スキー場へ下山完了。
お疲れ様でしたー!

いやー楽しかった!
唯一主稜線歩きはほとんどガスの中で残念でしたが、2日目のガスの中朝陽に浮かび上がる空木岳、滝雲流れる中央アルプス主稜線、威風堂々の南駒ケ岳は本当に感動できました。
コロナ禍以降久々の山で一泊ということもあり、その感動もひとしおでしたね。
1泊2日の中で山の魅力がググっと詰まった充実の山旅でした!

長文になりましたが最後まで読んでくれた方、ありがとう御座いました!
以上です。

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